天空を走る27kmの尾根道
四国山地・石鎚山系の稜線を縫う町道瓶ヶ森線――通称UFOラインは、標高1,300〜1,700mの尾根をおよそ27kmにわたり貫く“天空のスカイライン”です。山腹から一気に稜線へ飛び出すと、視界を遮るガードレールも電柱もなく、雲のカーペット上に舗装路が浮いているかのよう。左右へ振り返れば深い森と二つの海(瀬戸内海・太平洋)が同時にきらめき、ヘルメット越しに吸い込む空気まで甘く感じられます。名称の由来は開通当時の愛称「雄峰ライン」の略称にUFO目撃談が重なったものとされ、ミステリアスな物語がライダーの想像力をかき立てます。
ベストシーズンと見どころ
春(4月下旬〜5月中旬)
アケボノツツジとブナの若葉が稜線をパステルカラーに染め、朝霧のベールに包まれた山肌を淡い光がにじませます。新緑の香りがヘルメット内部まで満ち、走るほどに目も鼻も覚醒。
夏(6月下旬〜8月)
平地より5〜7℃低い天然クーラー。湿度が低い日は蒼天と深緑のコントラストが際立ち、遠く四万十川源流域まで見渡せます。午後は山霧が急発生するのでライトオンを忘れずに。
秋(10月中旬〜11月上旬)
カエデやブナが燃えるように赤黄へ変わり、夕陽が差すと稜線全体が炎の波。標高差のあるルートを上下することで色づきのグラデーションを一気に楽しめます。
冬季(11月下旬〜4月中旬)
路面凍結により全面通行止め。雪解け直後は霧氷が残る年もあり、白銀と新緑が同時に現れる幻想的な瞬間を狙えます。開通情報は必ずいの町観光協会や県道路情報で確認しましょう。
走行準備のチェックポイント
アクセス
高知自動車道・伊野ICから国道194号、県道17号経由で約90km(約90分)。最後の給油は道の駅木の香周辺が確実です。スマホ電波が弱い区間があるため、オフライン地図を事前ダウンロード推奨。
装備
山岳路ゆえ気温が変わりやすく、夏でもインナーグローブと薄手の防風ミッドレイヤーが役立ちます。霧による視界不良に備え、クリアシールドやアンチフォグシートも忘れずに。
安全
多くが1〜1.5車線。ブラインドコーナーではエンジンブレーキで減速し、対向四輪に先行譲渡を。落石・倒木が散見されるため昼間でもハイビーム寄りが安心です。
ツーリング後の寄り道スポット
山荘しらさ
稜線上に建つロッジ&カフェ。標高約1,400mで味わうハンドドリップコーヒーや人気メニュー「UFOライス」は疲労回復にぴったり。宿泊すれば満天の星と天の川を独占できます。
木の香温泉
弱アルカリ性の掛け流し湯がライディングで固まった肩や腰を芯から解凍。清流を眺めながら入る露天風呂は、“天空の後夜祭”と呼びたくなる癒やしです。
手打そば時屋
石臼挽き十割そばを山菜天ぷらとともに。春のタラの芽、秋の舞茸など季節の恵みを塩で食べると香りが際立ち、エネルギー補給と胃休めを同時に叶えます。
早朝と夕暮れに走ろう
夜明け30分後、雲海の下から差す黄金の光が路面を照らし、タイヤの軌跡までもが神々しい輝きを帯びます。夕刻は石鎚山のシルエットを背に茜から瑠璃へ染まる空と雲が織りなすグラデーション。UFOラインは一日の中で二度、劇的に表情を変える“天空の劇場”です。同じルートでも時間、季節、天気が変わるだけでまるで別世界。次の休日は満タンのタンクと高揚する鼓動を携え、あなた自身のベストショットを探す旅に出かけてみませんか。安全装備と思いやりを忘れず、点灯走行で天空のワインディングを存分に味わいましょう。